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もはや掛け布団の王様といっても過言でない羽毛布団です。
昭和63年の当社の開業当時は羽毛布団が洗いに来るのは1年に数枚くらいで、その都度 「うわ~羽毛だ 気をつけろ! 傷をつけるな!」 と恐る恐る洗ったことをよく覚えております。
それが今や毎日洗う掛け布団の半数以上は羽毛布団です。 これほど羽毛布団が普及したのは驚きですが、しかしその割に多くの方が「羽毛ふとん」についての知識が薄いのではないでしょうか。
一枚数千円のものから、100万以上もするものまで実にたくさんの種類があります。 これだけの種類や価格差があって皆さん本当に無駄のない適切な羽毛布団を選ぶことができるのでしょうか。
布団は人生の三分の一をも過ごす健康の大切な伴侶だと云われながら、布団に対する知識の低さを布団の洗濯という仕事を通して痛切に感じております。
ここでは洗濯から得た知識を基本に羽毛布団に関する簡単な知識をご紹介させて頂きます。 ぜひ知識を高めて布団の選び方や使い方の参考にして頂きたいと思います。
羽毛とは
アヒル(ダック)とかガチョウ(グース)など水鳥の胸や腹の部分の毛です。 そのほとんどを北欧など海外から輸入していますが、その地域と鳥の種類などによって大幅に料金の差があることが大きな特長としてあります。
形状によって「ダウン」と「フェザー」に分かれますが、ダウンはタンポポの毛のようなボール状で軸がなく、ふんわりとしています。 一方フェザーは布団の場合はスモールフェザーと呼ばれるもので、羽根の形をした細い軸がついている毛です。
その写真が以下ですので参照してください。
ダウンとフェザーの2種類がありますが、その合計が100%ですが、 ダウンが50%以上なら羽毛ふとんと呼び、50%以下なら羽根ふとんと云われています。つまりダウンの率が高いほど良質で、現在は95%が 最高になっています。
ただしこれらは羽毛布団を取り扱う業界の取り決めで決められており、時代とともに変わってきていますので、かなり分り難くなっていますので気をつけてみてください。
側生地について
側生地にもすごく種類がたくさんあって布団の性能や価格を大きく左右します。 特に問題になるのは繊維の糸の太さと織り方です。 あまりにも種類がたくさんあり、価格がかなり変わってきますので一概にどれがいいかは決められません。 現在主に流通している主な生地を書いておきますので参考にしてください。
織り方
- ブロード(平織り)
たて糸とよこ糸が互いに上下に組合わさった、一番簡単な織り方でブロードとも呼ばれます。よくシャツなどに多く使われています。
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ツイル(綾織り)
2本以上のよこ糸の上に、たて糸が上になるか下になるかして、表面に斜めに畝線(うねせん)が表れています。
光沢のある柔らかい織物で、ジーパンなどのデニム生地もこの織り方がされています。 - サテン(朱子織り)
たて糸かよこ糸のうち一方の糸を布の一面に長く浮かせ、 たて糸、よこ糸の交わる点をできるだけ離して配置した組織の織り方です。 手触りがよく光沢があり、高品質の羽毛布団に使用されています。
打ち込み本数
打ち込み本数とは生地の1インチ(約2.5cm)四方の中に織り込まれている縦糸と横糸の合計本数で表示します。 打ち込み本数が多いということは、それだけ細い糸を使用しているということで、打ち込み本数が多ければ多いほど、高い技術で細い糸を緻密に織り込んでいます。 打ち込み本数が多くなれば生地の密度が高くなり、柔らかく肌触りのよい、しなやかさを持つ高級生地となります。
以下羽毛布団の主な生地をご紹介します。
- 230本平織り
- 40/50ツイル超長綿
- 60サテン超長綿
- 80サテン超長綿
打ち込み数(1インチにおける糸の本数)230本のもので、羽毛布団としては必要最低限の打ち込み本数です。手触りはあまり良くありません。手で生地をつかんだときに音がします。コスト的には一番安価で、低価格の羽毛布団などにこの生地を使用しています。木綿糸で平織りした薄手の生地で、ソフトな肌触りが特徴です。最もシンプルな羽毛ふとん用の生地で比較的安い値段で販売されています。
たて糸に50番手糸、横糸に40番手糸を使用し、ツイル織(綾織り)りしたものです。がさつき感も無く、フィット感も特に問題はなく、コスト的にも中の下といったところです。
サテン(朱子織り)という織り方で美しい光沢がでやすい織り方です。 打ち込み本数が363本で、60番手糸を使用しサテン織りした非常に高密度な生地で高級羽毛布団の定番クラスになっています。触り心地が非常に良く、滑らかでソフトな感じです。
打ち込み本数415本のもので、よりすぐられた原綿のみを使用し、光沢としなやかさに優れ、羽毛布団にぴったりの生地です。サテン織りで非常に光沢が出て高級感があり、肌触りも最高な生地です。60番手よりもさらに極細の80番手糸を使用して織った高密度な生地で、60サテン超長綿よりも、より高級とされています。さらに細い超長綿を使用した100サテン長超綿もあります。
キルティングについて
羽毛を側生地で包んで布団を作るわけですが、この包み方に羽毛独特のキルティングで4×5、3×5あるいは5×6などの升目を作っています。 これにいろいろの種類があって性能や価格に大きく影響しますのでよく知っておくべきです。
代表的なものを下記しておきますので参考にしてください。
布団の上から見た状態は上の4×5立体キルトと同じですが、側面からみると上の図のようにマチがなく上下の生地を直接縫い付けています。 羽毛布団の当初はこれが主流でしたが今では立体キルトが主流になっています。
羽毛布団の品質ラベルについて
多くの羽毛布団にはその布団のレベルを表すラベルがついております。しかしこれらは日本の羽毛製品を取り扱う業界団体が自主的に決めていることで日本全体が統一されているものではありませんので注意が必要です。
またその組織は過去に改称や合併をしているので、かなり複雑になっていますのでご注意ください。ここでは羽毛ふとんでは一番代表的と思われる「日本羽毛協会」=日本羽毛製品協同組合=日本寝具製造協同組合より改称・・・と合併した組合。 のラベルを紹介しておきます。
なおレベル中の440db以上などの数値はダウンパワーと呼ばれ、羽毛のふくらみを数値化したもので、数値が大きいほど大きくふくらむことを表し、高品質な羽毛となります。
JIS L-1903のかさ高性試験方法で測定され、ふとんの中の羽毛と同程度の圧力を掛けた際の、1gあたりの体積(cm3/g)がダウンパワーの数値です。 数値の高いものほど高級とされております。
また平成24年3月末までは、このダウンパワーと呼ばれるものは「かさ高」としてmmで表示されていました。以下は次のように換算してみてください。 数字が大きいほど上質とされています。
440dp=180mm 400dp=165mm 350dp=145mm 300dp=120mm
羽毛布団の問題点
羽毛ふとんは非常にいい布団ですが非常に気になることがあります。ぜひ詳しく知ってほしいと思います。
通気性が悪くて蒸れる問題があります。
これは普通の生地では中の羽毛が抜け出てしまう特性があるため、ダウンプルーフ加工と云って繊維の糸をローラーで熱を掛けて押しつぶしているためです。通常は丸い糸ですがダウンプルーフ加工によって押しつぶされて隣同士の糸が強力に密着しています。
このために羽毛が抜け出ることがなくなっているのですが、生地は風船のような状態で空気も通り難いほどになっています。羽毛布団を押しつぶしてみてください。中の空気が極端に抜けなくなっています。
このことから羽毛ふとんは非常に通気性が悪くて蒸れる特性があることはぜひとも知っておいて頂きたいと思います。筆者など汗かきにはたまらないものでした。
羽毛布団には余りにも価格差がありすぎて適性品を選ぶことが困難です。
羽毛はほとんどを輸入に頼っていますが、そのためか産地や鳥の種類によって極端に値段の差があります。
市場の布団をみると1枚1万円を切る安い布団から、数百万円もする高いものまで無数にあります。もちろん羽毛の種類だけでなく側の生地や作り方で変わってくるので余計に差が大きくなることは分りますが。
これだけの価格差があってどれが本当に適切な布団と云えるのでしょうか?
もちろん高いものは確かにその良さがあります。安いものと差があることも分ります。 しかし1万円の布団に対して100万円の布団は100倍の効果があるのでしょうか? 誰に聞いてもNOと云うはずです。
余りにも安いものは問題があると思いますが、必要以上に高いものは明らかに無駄だと思います。 安いものならあまり問題にも思いませんが、羽毛布団のような高額になってくると非常に問題だと思います。
もう一つの問題として米の秋田こまちは美味しくて評判の米ですが、以前に秋田こまちの販売数が生産数よりも数倍も多いという嘆かわしい事件がありました。 実は羽毛はその米以上にまやかしが多いとも云われています。 安いものなら多少は我慢できますが、高い羽毛布団になると実に馬鹿らしいことではないでしょうか。
毎日たくさんの布団を洗っておりますと「これは!」と驚くような低品質な布団が珍しくありません。新品の内は分り難いものですが、洗って水に濡らすとすごくよく分ります。
臭いの出るもの、黒いアクのでるもの、型崩れがするもの・・・あるメーカーのものなどはクリーニングをお断りしたいと思っているのも事実です。
もちろん極く一部のことで大半は問題はないのかと思うのですが、あまりにも価格差が大きいことなどを考えると羽毛布団には疑問符を付けざるを得ません。